Illovo Beach, South Africa
 
ここ最近のコメント(英語版の方)で、私らが早く移動し過ぎだとか、距離を稼いでいるだけだとか、現地人との交流が足りていないのでは、、、という批判があったので、今日は私たちが一体どういう旅をしているのかを書きたいと思う。
 
改めて私らがやっている旅のことを考えると、美大予備校でずっと学んでいたデッザンを思い出す。初心者は部分部分の細部を最初から書き込み過ぎで、気がつくとプロポーションが全く狂っていたり全体性が失われていたりする。上達してくると、まずモチーフの構造、プロポーションを把握し、構図を作り、そして少しづつ細部に入ってゆく。私らの旅はちょうどその段階の踏み方と似ていると思う。ある国から国へと移動し、それぞれの国の中では都市街から郊外の町、田舎の小さな村まで、金持ちの地域から貧民街まで車でまわることでざっと観察する。たしかに細部には欠けることもあるけれど、都会だけ見ていても中だけ見ていてもその国の全体像は把握出来ない。私らは、ざっとではあるけれど、流れでその国について学んでゆき、他の国々と比較してゆく。アウトラインというか全体性を見る。そういう風に流れでモノをみてゆくと本当に様々な問題が浮き彫りになってきて、いろんなコトを考えさせられるし学ばされる。私は旅の間、国政について考え、歴史について学び、その他いろんなことについて考えさせられた。植民について、人種について、民族について、アパルトヘイトについて、資本主義社会について、経済、貿易、流通、地理、気候、農業、、、
 
そして、先進国に住んでいたら理解しにくいコトかもしれないけれど、道路一つをとっても本当にいろんなことが学べる。特に西アフリカにいた時は道路は国政のバロメーター的なものだなぁとつくづく思わされた。その国のインファストラクチャーがしっかりしているかどうかは国道に反映される。
 
例えば、本当にメチャクチャだったカメルーンの主要道路。普通だったら三日でとある都市からとある田舎まで運べるビールのトラックが、むかるんでハマったり、ひっくり返ったりして足止めをくらいながら七日かかって田舎まで到着する。で、その田舎についた頃には商品の三分の一がダメになっていて自然にその値段はつり上がる。裕福な都会ではビールが$3で買えて、貧しい田舎ではビールが$7じゃないと買えない。では、そんな田舎の人は田畑での作物を都会で売ることはできないのかというと足がない。そして、都会へ戻ってゆくトラック運転手に格安で売って都会に運ばれる。都市と田舎の貧富の差は広がるばかり。。。で、じゃぁ、この国は道路を造ったり治したりするお金がまったく無いのかと思えば、ちゃっかり大統領の家の前にはしっかりと舗装された私道があったりする。でも彼は先進国に「他の国に比べカメルーンへの寄付が少ない」と文句を言う。腐った政府。
 
ニジェールでは飢饉があったとき、道が悪くて物資が十分に届けられなかった。
 
ナイジェリアでは、闇市場のための物資が次々と隣国カメルーンへ運ばれる。それ専用の道路まで存在する。チェックポイントの警察もそれを知っているから、それをダシにドライバーから金をせびる。
 
、、、といったような具合に、道路一つをとっても様々なことが学べる。
 
一カ所に長く滞在して現地人と何かやり合うだけが何かを学べる唯一の方法ではないということ、 私らはただ距離を稼いでいるワケではないということを を理解してもらいたい。ブログには全部書いている訳ではないけれど、もちろん、私らだってドラマチックではないにしても、常に生活の基本的なレベルで現地の人たちとは交流しているし、それはそれでやっぱり楽しいしいろんなコトが学べる。時間に余裕があればもっともっとそれぞれの場所に滞在したい。でも、限られた時間の中で私らは何を優先するのか選ばなくてはならない。 私らがこの旅を機に気に入ったり、興味を持った所があれば、将来細部を描きにまた訪れるかもしれない。
 
 
それはただ、それぞれ違った種類の旅の仕方でどちらのやり方が正しいなんて答えは無い。
 
とにかく、私にとっては、ここでは毎日が勉強。
 
 
 
写真: ウンタタ北部にて。
Wednesday, March 19, 2008